アカウント分けるのだってマナーです
※この記事は2018年8月1日に作成されたものです
(イラスト:はるなか)
「アカウントを分けるのは、ネット上のマナーだと思います!」
当時ハタチになったばかりの、女性の言葉です。
1998年生まれの彼女は、指定校推薦で大学進学が決まった後、すぐに新しいTwitterアカウントを作成しました。もちろん、高校の友達用とは別のものです。
「受験の時でもTwitterを見ている人はいます。推薦ではやく決まったからといって、騒ぐのは良くないじゃないですか」
「教室の中でも同じことですよね。勉強している横で楽しそうな話をされたら、ウザいと思いますし」
彼女は、大学での友達作りをスムーズに行うため、Twitterを利用しました。推薦で同じ大学に決まった人を見つけて声をかけ、「入学前オフ会」を開催したといいます。
「40人集まりました!同じ指定校推薦同士、仲良くなりましたよ」
「ガイダンスの日もタイムラインで呼びかけて、『初めまして』の人と駅で待ち合わせしました。その日は一日中、一緒に行動しました」
直接会ったことは無くとも、条件や目的が同じことがわかれば、あとは会って話すだけ。
彼女にとってSNSは、友達のプロフィールを先に知るための、大切な情報源です。
「ツイートを見ていれば、性格とか趣味がだいたいわかりますよね。おかげで話題も増えて、よく一緒にいる友達ができました。今でも一番仲がいいです」
(20歳 女性 Fさん)
Fさんは、Twitterのおかげで友達作りがうまくいった、と嬉しそうに話していました。
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朝の日課は、Twitterのトレンドチェック。こんにちは、編集長のシノディーです。
今回は、Z世代が考える「SNSアカウントの使い分け」について、焦点をあてていきます。
約3,000名を対象にした若者世代のライフスタイル調査「Z世代レポート2018」では、「スマートフォンをはじめて持った年齢」に、はっきりとした世代区分があることが明らかになりました。
△スマートフォンをはじめて持った年齢(「Z世代レポート2018」より抜粋)
Z世代は平均して、高校に進学する15歳ごろから、自身のスマートフォンを所有しています。大半が購入と同時に、TwitterやLINEなどのコミュニケーションアプリをインストールしています。
それに伴い、年代間ギャップの大きい項目の中では、「SNS」に関連する項目が多く見受けられました。
△16~21歳と29~35歳で差の大きい項目(「Z世代レポート2018」より抜粋)
「1つのSNSで複数のアカウントを使い分けている」Z世代は40%近くにのぼるのに対し、Y世代に該当する29~35歳は10%未満と、30ポイント近く差が開いています。
気になるのは、「何をそんなに使い分けるの?」という中身の部分ですよね。
そこで実際に、どのようにしてアカウントを使い分けているのか、Z世代大学生たちに話しを聞いてきました。(協力:イノベーションチームdot)
「Twitterは、趣味ごとに使い分けしています。音楽と、カメラと、ファッション系で3つありますね。情報収集のために見たり、それについて呟いたりしたいので、アカウントごとにまとめてあると便利です」
(18歳 女性 Kさん)
Kさんは、趣味の情報を集めたり、それぞれの「好きなこと」について語る場を使い分ける「趣味分けタイプ」。趣味趣向が細分化している時代ならではの使い分けです。
「アカウントは4つ持っていて、友達ごとにわけています。地元、高校、大学、他校の友達で4つです。だって、コミュニケーションの仕方が全然違うし、なんとなく世間話しても、かみ合わないじゃないですか。普通のマナーとして、使いわけています」
(20歳 男性 Mくん)
Mくんは、「友達分けタイプ」。彼は交友関係が広く、大学のサークルにもたくさん所属しています。記事冒頭のFさんのエピソードにもあったように、対人関係での「マナー」に配慮した使い分けの目的があるようです。
さらにMくんは、リアルのコミュニティマナーだけでなく、ネット上のリテラシーにもしっかりと気を配っていました。
「アカウント4つは、すべて鍵をかけています※。SNSで何でもわかっちゃう時代ですし、本当に何があるかわからないので。大学の授業でも、ネットリテラシーについて教わりました。そもそも、普通に生活していたって、知らない人に会話が聞かれてるのはイヤじゃないですか?」
※鍵をかける…Twitter上で、アカウントを非公開設定にすること。投稿は、自分が許可したユーザーにのみ届くようになる。
(イラスト:はるなか)
一方で、インタビューをした中には、SNSでの投稿をやめてしまった人もいました。
「中2の時からスマホを使っています。アニメが好きだったので、Twitterで趣味アカウントを作って語り合ったり、オフ会に行ったりもしてました」
「けど結局、フォロワーさんの好き嫌いに気を遣ちゃって、自分の意見が言いづらくなりました。この人はこれが好きだって言ってるのに、私は嫌いだって言ったら気まずくなりますし。そのうち息苦しくなって、Twitterのアカウントを消しました」
(19歳 女性 Iさん)
Iさんは他にも、アカウントを消した要因として「フォロワーの素性がわからないのが怖くなった」という理由も挙げています。
しばらくTwitterから離れ、「SNS疲れ」を癒したそうです。
「今では、知り合いと繋がらないアカウントを作って、気になるツイートに『いいね』を押したり、淡々と感情の高まりをつぶやいたり、ですね。完全な独り言用として使っています」
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「趣味分け」「友達分け」「SNS疲れ」……ソーシャルネイティブの「Z世代」と一口にいえど、その使い方は様々なタイプに分かれています。今回インタビューした数名だけでも、全く違ったSNSとの関わり方が見えてきました。
その中でも共通しているのは、リテラシー意識が非常に高いこと。自分の投稿が誰にどう見られているのか、しっかりと意識したアカウント運用をしています。
また、リアルの世界と同じように、SNS上でも友達や周囲の人に配慮したふるまい方が印象的でした。
「アカウント分け」は、現実の対人関係と同じように、相手の気持ちに配慮した結果行われるもの。Z世代にとって「SNS」の存在は、リアル世界との境界線が薄く、自分の居場所として自然にあるものなのではないでしょうか。